患者の負担は軽減されないJIS規格の行方
医療用ウィッグは原材料費も不明なら、研究開発費もベールにつつまれている。業界自体が小さいのでスポットライトが当たることは少ないが、その不明瞭さが、価格の高い医療用ウィッグを生んでいるという見方もある。
抗がん剤治療とその副作用である脱毛に悩んでいる患者にとっては、「どうでもいいからウィッグの相場というものを教えて欲しい」という気持ちだろう。医療用なのに保険が適用されないという不満の声も昔からある。
ここに来て、関係官庁がようやく動き出したが、価格が高い、患者の経済的負担が大きい、JIS規格を策定して放置状態の品質格差に歯止めをかけたいといった見解以外は、利用者が望む保険診療化などの方向は打ち出されていない。
不明瞭で高額な医療用ウィッグへの自治体助成
そうした実状にしびれを切らした形で動き出したのが地方自治体だ。医療用ウィッグの購入に補助金・助成金を付与する自治体が相次いでいる。助成額はわずか1~3万円とわずかだが、無視されつづけたような患者にとってはうれしい。
医療用ウィッグを助成する地方自治体の一例
- 山形県
- 米沢市では、がん患者の就労や社会参加を目的に、国がすすめるクオリティ・オブ・ライフを指標に、医療用ウィッグの購入費の一部を助成。助成金の額は2万円または医療用ウィッグ購入経費の2分の1で、どちらか額の低いほうに適用されている。
- 鳥取県
- 抗がん剤治療に伴う脱毛痕(外見変貌)を整えることで、がん患者の心理的負担を軽減し、クオリティ・オブ・ライフの質の向上をめざす。そのため医療用ウィッグの購入費用の補助制度を開始。補助率・補助額は購入経費の2分の1(補助上限額 2万円)。
- 秋田県
- 抗がん剤治療の副作用である脱毛に悩むがん患者に対して、社会参加のバックアップを目的とした医療用ウィッグの購入費の一部助成を始めた。助成は上限1万5,000円。県内全25市町村中、15市町村で最大3万円の補助を実施。
- 山口県
- 外観、性能、試験方法などを定めたJIS規格に適合した医療用ウィッグに限定したうえで、医療用ウィッグ本体の購入費用を助成。助成の額は対象となる購入費用の2分の1の額、または3万円のいずれか低いほうの金額。
※自治体により、ガン治療を受けていることを証明する書類の提出など、必要書類が異なります。また助成にともなう内容にも違いがあります。詳しくは当該する各自治体の部署にお問い合わせください。(2018年3月現在)
都道府県の助成制度は、山形県がもっとも早くスタートを切り、鳥取県、秋田県がそれにつづく形となった。今後、各自治体もこの流れにつづいて医療用ウィッグ助成に対する取り組みを開始するとみられている。