自動化などできない“医療用ウィッグの価格”の限界
最近ではあまり驚かなくなったが、欧米企業や国内の外資系企業にくらべると日本企業トップの年俸はかなりの低さで、これでほんとうにいいのかなと思ってしまうこともある。欧米企業の社長の年俸は数億円・数十億円という単位なのに、日本企業の社長は数千万円というケタの違い。
けれども社員の給料は欧米も日本も低賃金で、平成30年度の日本の給与水準はまったく上がっていない。むしろ税金の支払いなどを差引いた実質的な給与所得の合計で計算すると下がっている。企業の業績は上がって株価も上がったというのに、“社員の給料は実質右肩下がり”になっているのだ。
これでは景気は良くならないし、私たち消費者のサイフの紐はどんどん固くなる。固くなって不安になって貯金してしまうから、モノの値段はどんどん安くなって低価格に歯止めがかからなくなる。私がお世話になっている医療用ウィッグの製品も、品質の割にはスゴく低価格なのに、気がついたらまた販売価格が下がっていた。
こんなことをしてやっていけるのかと心配になってしまうほど~。どこの企業でもコストがもっともかさむのは人件費で、オートメーション化・無人化できる工場と違って、ウィッグの製作は大半が職人さんの手作業。他の業種のように、自動化して従業員を減らすことなどできない。
- 職人を減らせば出荷個数が減る。
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- 出荷個数が減ると売上に影響するので、職人だけ減らして個数は守る。
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- 少ない職人で多くの個数の医療用のウィッグを作るようになる。
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- どこかの手作業の工程を省かないと少ない人員で多くは作れない。
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- これまで手をかけていた工程を省くようにする。
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- 品質や機能が低下していく。
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- 高評価だった医療用ウィッグなのに、客からクレームが入るようになる。
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- 製品の売れ行きが悪くなる。
値下げを望んでいない医療用ウィッグのリピーター!?
医療用ウィッグの価格が下がっているのは、リアル店舗で販売しているウィッグメーカーも通販メーカーも同じだけれど、とくに通販メーカーの値下げが顕著。もともと通販は無店舗で営業スタッフも少なくてすむから、コストパフォーマンスの面ではすごく有利と言われてきた。それでも値下げしないとやっていけないようになっている。
上記に示したような道筋をたどってしまうと、やがては製品が売れないからまた値下げし、最後には倒産という結果になってしまう。腕の良い職人でも、同じ職業で再就職できるほど業界の景気は良くないので、他の職業に再就職することになる。するとウィッグ職人としての腕はなくなってしまう。
職人が技術を身に付けるまでには何年もかかるので、景気が良くなったからまた雇おうと割り切れるものではない。もう二度と雇うことはできず、一から育てるしかない。そんなことはできないのでどんどん先細りしていって、生き残っていても最後は廃業になる。時代の曲がり角では、そうやって業界自体がなくなっていった。
医療用ウィッグがなくては暮らしていけない身の私としては、そんなことには絶対になって欲しくない。価格を下げて職人を減らしてという道をたどるなら、価格は据え置きでもかまわない。リピーターの女性たちは絶対にそう思っているはず。利用者にとって良いものは必需品であって、安いなら買うというものとは違う。