医療用ウィッグの製造コスト。どこを削っているか
たとえば大手メーカーの一般用ウィッグや医療用ウィッグの製作工程をみてみると、原材料の仕入れ・仕入れにかかる費用、テレビCMやチラシ・ポスターなどの広告宣伝・宣伝費用、店舗運営とその維持費、社員の給料・賞与、人材教育とそれに必要な経費といったように多くのプロセスを経ます。そのプロスセスの1つ1つには費用がかかるので、医療用ウィッグを売って利益を出すには、それなりの販売価格がつきます。
では企業努力をして1つ1つのプロセスにかかる経費を抑えても、それだけでは価格競争に勝てないと判断したとき、経営者はどんな手段に打って出ると思いますか?その判断の仕方に、会社(メーカー)としての命運がかかっています。たとえばいっそうの低価格を実現するために、原材料を国内の良質なものではなく、海外の安い原材料に切り替えて作ったとしたらどうなるでしょう?
いま巷でよく言われている「安物・低価格の医療用ウィッグ」というのは、原材料を安価な海外製品に切り替えた製品に向けられています。もちろん海外の原材料がすべて悪いというわけではありません。むしろ海外の原材料のほうがいいというものもあります。ただし海外から輸入する場合は調達コストが高くつくので、国外と国内、どちらから仕入れたほうが安くつくかという判断になります。
- 人員(従業員)の削減(全体の人件費を安くする)。
- 価格の安い原材料を海外から大量に仕入れる。
- 生産工程の見直し。省ける工程を省いて安くすませる。
- 内製比率を抑える。外注を増やして安価で作業させる。
- サービス内容の見直し。メンテナンスの項目を減らして料金を引き上げる。
通販業界の医療用ウィッグでさえ価格競争が激化
たとえば実店舗販売ではない通販(無店舗経営)の場合は、店員や店舗の維持費がかからないので有利とされていますが、ネット上にはネット上での価格競争があるので、リアル店舗と通販事業者をくらべて、通販のほうに強みがあるといってもあまり意味がありません。通販業者の価格競争も激しくなっていて、コストの見直しだけでは生き残れないところまできています。
企業努力で医療用ウィッグの低価格を実現しているうちは「低価格・高品質」と言えるのですが、先にお話ししたようなコストカットのための人員削減や原材料の切り替えをやりすぎてしまうと、“低価格で低品質、安物の部類”に入ってしまいます。ユーザーとしてはそこのところの見極めをしっかりしておく必要があります。
- 品質が劣っていても低価格の医療用ウィッグならそれでいい。
- あくまでも高品質で低価格な医療用ウィッグを求める。
- 高くついても有名ブランドのウィッグを買って、自分を満足させたい。
人それぞれに買物の仕方はあると思いますが、販売価格が医療用ウィッグの品質維持や機能性の向上のために使われていないとしたら残念なことです。中には、「高く売って利益を出す」、「安く売っても利益を出す」といった極端な作戦をとるメーカーの製品もあります。自分はどこで満足するか割り切るかを整理しておきましょう。