相場の価格がないと消費者が不便
世の中の商品には相場というものがあります。別の言い方をすれば、中心価格帯とかボリュームゾーンといった使い方をするときもあります。スーパーで売っているポテトチップスの価格は、特価で98円とか88円ですが、そのコーナーではない他の棚へ行くと120円-180円で売っています。これがポテトチップスの中心価格帯であり、相場の価格です。消費者は相場の価格を知っているので、Aのポテトチップスは相場にくらべて安い、Bは高い、Cはもっと高いけれど新製品でおいしいから納得できるなど、そのときのお財布の都合で品選びができます。
では医療用ウィッグはどうでしょうか?医療用のウィッグに相場価格や中心価格帯、あるいはウィッグ市場全体のボリュームゾーンといったものがあるでしょうか。答えはノーです。理由はいろいろありますが、1つには市場が小さくて特異なので、医療用ウィッグが売れたからといって国内の景気が良くなるわけではないから。つまり市場を注意深く観察・分析して、相場や中心価格帯、ボリュームゾーンといったレポートを提出する専門家がいないのです。そのため医療用ウィッグの価格は、いつまでたっても共通の認識ができません。そうなるとどういう現象が起きるかというと、メーカーが勝手に付けた価格に、消費者が引っ張られる、従わざるを得なくなるのです。
第三者の客観的な目が届かない放任価格
たとえば医療用ウィッグの市場が数兆円規模なら、経済評論家やアナリストがその動向を注意深く観察します。そしてテレビを観ている人たちに、最新の情報を送ったり、客観的な評論をしたりします。するとメーカーは、他社よりも良い評価を得てもっと売れるようにしようと高品質で高機能、消費者に受け入れられる価格の製品を発売しようと頑張ります。このようにして市場競争がはじまり、高品質で良く売れる価格帯の製品というものが形成されていきます。ところが、そのような規模にない医療用ウィッグの世界は、経済アナリストも無関心なため、第三者の客観的な目が届かない、メーカー主導の放任価格・自由価格の状態がつづいています。
高いものを買わされてもわからない、安いものを買っても品質がどうか、客観的な情報がないのでわかりづらい~。結局、損をしているのは消費者、医療用ウィッグが必要な患者さんということになります。無責任な言い方になりますが、現在のところ、価格、品質、特徴・機能などのバランスを見極めるのは、購入者本人でしかありません。たとえば通販主体のウィッグメーカー数社を洗い出し、商品ごとの機能や特徴、価格を比較検討できるようにデータ化するしかないのです。
そのようなことはなかなか困難で現実的ではないと思いますが、医療用ウィッグの市場はそのような状態にあり、みなさんがきちんとした選択基準をもたないと高い買い物をすることになるということだけは、理解していただきたいと思います。