医療用ウィッグの価格をめぐっては、「思ったより高くなった」という声が少なくありません。実際にあった事例から、価格が分かりにくくなる仕組みを見ていきます。

「参考価格」のはずが、最終的に15万円プラスアルファに

ある利用者は、「参考価格」の値段表を見てサイトで注文したところ、髪の長さやウェーブの調整を依頼しただけで「セミオーダー」という扱いになり、最終的な価格は10万円を大きく超えて15万円プラスアルファになったといいます。本人は通販の場合、アレンジ料込みの価格だと思い込んでいたため、「そこまで特別な注文はしていないのに」と戸惑ったそうです。周囲に相談すると、「本来は5万円〜10万円の範囲でアレンジ・試着込みの品質のウィッグがあるはず」という反応だったといいます。

医療用ウィッグは2年に1回程度の買い替えが推奨されることも多く、15万円のウィッグであれば単純計算で年間7万5,000円の負担になります。退院後は休職を挟むケースも多く、貯金を切り崩しながらの生活になりやすいタイミングでこの誤算に気づくのは、精神的にもこたえるものがあります。

通販でも、「参考価格」に何が含まれ、何が追加料金になるのかを注文前に確認しておかないと、想定より高い金額になることがあります。アレンジ・試着・返品まで込みの価格かどうかは、必ず事前にチェックしましょう。

「高価格=高品質」という前提が崩れつつある業界

2017年には、国内大手の老舗ウィッグメーカーが、業績不振ではないにもかかわらず事業売却(MBO)に至ったことが業界に衝撃を与えました。品質は国内トップクラスで、病気で髪を失った子どもたちへウィッグを無償提供するなど社会貢献度も高い企業でしたが、「医療用ウィッグ=職人の手作業=高価格・高級」という従来の価値観が、時代とともに支持されにくくなったことが背景にあるとみられています。

MBOは「倒産」ではなく、戦略的な選択

MBO(マネジメント・バイ・アウト、経営陣による事業売却)という言葉から倒産を連想する人もいますが、実際は正反対の意味合いを持つ経営判断です。体力が残っているうちに事業の一部を売却し、その売却益を元手に他の事業へ経営資源を集中させる、健全な戦略のひとつとされています。市場規模自体は1,400億円程度ともいわれ、女性向けウィッグの需要はこの5年で男性向けを大きく上回るペースで伸びていました。それでも「高級路線」という従来のビジネスモデルだけでは立ち行かなくなったという点に、業界構造の変化が表れています。所有からレンタルへと消費者の意識がシフトしつつあることも、30万円以上する「所有前提」のウィッグが時代に合わなくなってきた一因とされています。この業界再編の動きからも分かるように、価格の高さが必ずしも支持される時代ではなくなってきています。

参考価格の内訳を確認する習慣と、価格の高さ=品質という思い込みを一度手放すこと。この2点が、不透明な価格に振り回されないための備えになります。