同じ「医療用ウィッグ」でも、通販と実店舗では価格が3分の1以下になることがあります。通常の商品なら10〜20%程度の差で収まりそうなものですが、これほどの開きが出るのはなぜでしょうか。
医療用ウィッグは高くて当たり前だと思い込んでいたところに、ネットの口コミで3万円台・5万円台の商品を見つけて驚いたという声もよく聞かれます。同じような商品やサービスであれば、通販とリアル店舗の差はせいぜい1〜2割程度というのが一般的な感覚です。それが3倍以上も開くとなると、どこかに仕組みがあるはずだと考えるのが自然です。
そもそも医療用ウィッグは「少量生産品」
一般的に、需要が少ない商品ほど大量生産ができず、単価は高くなりがちです。医療用ウィッグは抗がん剤治療などで髪を失った方向けの商品で、ファッション用ウィッグに比べると需要は限られます(乳がんにかかる女性だけでも5万人以上とされ、他のがん患者や男性の需要を含めるとゼロではありませんが、ファッション用ほどの規模ではありません)。多くのメーカーは医療用ウィッグを「複数あるラインナップの一つ」として作っているため、品種が多く生産コストが下がりにくいのです。
特化生産と内製化がカギ
この状況を変えたのが、医療用ウィッグに特化して品種を絞り、少品種大量生産に近い形を実現したメーカーです。さらに、価格構成のうち、外部委託している工程をできるだけ社内で完結させる「内製化」を進めることで、外注費や輸送コストまで圧縮しています。実際、以前なら30万円ほどした中級品クラスの医療用ウィッグが、今では10万円以下で手に入るようになったケースもあるといわれます。
価格はどのように積み上がっているのか
医療用ウィッグの価格は、おおまかに「原材料費+加工費+人件費+販売管理費+維持費」の合計に利益を乗せる形で決まります。このうち最も大きな割合を占めるのが人件費です。粗悪な安物であれば、質の悪い材料を仕入れて手を抜き、数を多く出荷して薄利多売で稼ぐという構造になりがちですが、価格が安くても質は高いとされる通販ブランドの場合は、人件費や原材料費そのものを削るのではなく、外注に回していた工程を内製化することで、支出全体を圧縮しているのが特徴です。下請けに出す仕事は減ってしまいますが、外注費と輸送コストの両方を合理化できるという理屈です。
つまり価格差は、単なる「値引き」ではなく、生産・販売の仕組みそのものの違いから生まれています。仕組みを理解しておくと、極端に安い価格を見たときにも「なぜこの価格が実現できているのか」を落ち着いて判断しやすくなります。