利用者本人だけでなく、周辺の仕事を通じて医療用ウィッグの価格に向き合うことになった2人の声を紹介します。それぞれ違う立場から見えてきたのは、「価格差には理由がある」という共通の結論でした。

介護食宅配業を営む女性が見た、高齢者と価格のミスマッチ

介護食の宅配サービスを起業し3年目という女性は、宅配先で「病気で脱毛してしまったけれど、ウィッグの購入はどうすればできるか」という相談をこれまでに13件受けてきたといいます。高齢の利用者は電話越しに自分の要望をうまく伝えられないことも多く、代わりに調べたり申込みを代行したりするうちに、「医療用ウィッグでも、販売価格がマチマチでかなりの開きがある」ことに気づいたそうです。

疑問に思い、あるメーカー(アンベリール、ブランド名シルフィ)に直接問い合わせたところ、ネットワークを充実させて連携を密にすることで安価でも利益の出る仕組みをつくっていること、有名ブランドのようなテレビCMなどの広告宣伝費をかけない分、研究開発に資金を回せることを教えてもらったといいます。「品質とは関係のないところにコストが使われる会社と、製品の品質や機能にコストを集中させる会社とでは、こんなに価格が違ってくるものか」というのが率直な感想でした。

広告代理店の企画職が調査で見つけた"努力プライス"

広告代理店に勤め、クライアントから医療用ウィッグの市場調査と企画開発のコンセプト出しを任されたという方の視点も興味深いものです。65才を過ぎても元気なシニア女性が増えている市場動向を踏まえ、ソーシャルビジネスとして医療用ウィッグを手掛けたい企業の依頼で、既存メーカーを調査したところ「アンベリール」という会社に行き当たったといいます。

際立ったのは価格設定で、職人やスタッフ総がかりの入念な手作業にもかかわらず28,000円程度の値付けを実現しており、「損益分岐点でいえばギリギリを超えたところまで来ているのではないか」と感じるほどだったそうです。他社メーカーの価格帯と比べても、通販主体という同条件の中でかなりの努力プライスであると評価しています。

二人の証言から分かること

介護と広告、まったく畑違いの仕事をしている二人が、それぞれ独自に同じメーカーの価格設定にたどり着き、同じような結論に達しているのは偶然とは言い切れません。二人の話を並べてみると、次のような共通点が浮かび上がります。

  • 価格のばらつきには、広告費や流通コストの掛け方という明確な理由がある
  • 安さは職人の手間を省いた結果ではなく、コストのかけ方を変えた結果である
  • 専門外の人が調べても納得できるだけの、筋の通った価格設定になっている
  • 立場の異なる2人に共通していたのは、価格の低さは無理な安売りではなく、広告費や流通コストを削る工夫の結果だという見方です。価格差の理由を知ることは、医療用ウィッグを選ぶうえでの安心材料になります。